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その36

気鬱と漢方

 漢方医学書の病名分類項目の中には、鬱(うつ)証門という箇所が必ずあります。さらに鬱証門は気鬱、血鬱、食鬱、痰鬱、火鬱、湿鬱の六つの病名に分かれます。
「鬱」の字を漢和辞典で見てみますと、「木々がうっそうとこもった状態。気の充満を意味する」等、ふさがって伸び伸びしない状態を表わすようです。
その中の「気鬱」とは、気がふさがって伸びやかでない病気ということになり、今日の精神科領域の心身症、神経症、うつ病、心の病気等々は、漢方でいうところの「気鬱の漢方薬」の範疇(はんちゅう)に入ります。

  気の概念のない現代医学では「気」の理解は困難です。そこで、江戸時代の漢方名医浅井貞庵は、気鬱について

「気の鬱するの、心遣いするの、退屈するの、肝癪起こすの、思案するのといいて、心は一処に凝るものぞ。気の一処に凝れば、また気の至らぬ届かぬ処ができる・・・その凝るところが、或いは頭面、或いは胸腹、或いは手足・・・」

つまり、気が鬱すると、精神神経症状はもちろん、身体全身症状にもつながるということです。

  漢方には、理気剤、順気剤、疎肝剤等の気鬱の漢方薬があります。

漢方専門薬局 桂林 與五澤 孝
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