●養生薬の話●
東洋医学の基礎理念の根底には「天人合一説」「陰陽五行説」が有ります。総じて、自然界と人体を同じ法則の上で考えているのです。そして、自然の薬を使い、自然の力を利用して健康を勝ち取ろうとする医学が漢方です。薬にしても古典の思想が現代にそのまま生きています。
一例として最古の薬草書「神農本草経」の陶弘景注を記します。
『上薬を君となし、養命を主り、以って天に応ず。毒なく多服久服して人を傷らず、軽身益気不老延年を欲する者は上薬に本く。中薬は臣となし、養性を主り、以って人に応ず。無毒有毒その宜しきを斟酌す。下薬を佐使となし、治病を主り、以って地に応ず。毒多く久服すべからず。邪気を除き疾を癒さんと欲する者は下薬に本く』以上、天地人にかたどり、上中下薬に分け健康法を説明しています。
つまり、大病を避け不老延年の大往生を願うのであれば、上薬を毎日飲みなさい。病気の根本治療薬(体質改善)はよく考慮してしっかり服用しなさい。救急的に苦しみを癒すには、対症療法薬(下薬)を選用しなさい。ただし対症療法薬(下薬)は長く服すべからず。従いまして、漢方には「上薬」と言う養生薬の概念が昔から有るのです。 |