●上中下薬●
漢方では、東洋医学の基本理念の中の「天人合一説」「陰陽五行説」を根底に漢方薬を「上中下」に区分して使い分けてきました。生薬にしても、最古の薬草書「神農本草経」では、三百六十五種の薬草を上薬、中薬、下薬に三分類し、夫々百二十種、百二十種、百二十五種を記載しております。
南北朝時代の(本草経集注)の序録によりますと「上薬を君と為し、養命を主り、以て天に応ず。毒無く多服久服して人を傷らず。軽身益気不老延年を欲するものは上経に本く。中薬を臣と為し、養生を主り、以て人に応ず。無毒有毒その宜しきを斟酌す。病を防ぎ虚羸を捕なんと欲する者は中経に本く。下薬を佐使と為し、治病を主り、以て地に応ず。毒多く久服すべからず。寒熱の邪気を除き積聚を破り疾を癒さんと欲する者は下経に本く」とあります。
以上天地人三才にかたどり、一年の日数に合わせたことがわかります。東洋医学では、下薬中心の対症療法を「標治法」「逐機」といい長期の服用を慎みます。中薬上薬中心の慢性病根治法や体質改善の方法を「本治法」「持重」と言います。もた古人は「病動かざる時は泰然として一方を主張するなり。治病は持重が常なり。尚、経と権とを知らざれば道全からざるが如し」と治療指針を強く述べております。 |